グルメサイトとは、顧客が飲食店を選ぶ際に参考にする広告メディアを指します。飲食店にとっては、利用することで新規顧客に対する集客効果を期待できます。
本記事では、グルメサイトとはどのようなサイトなのかを詳しく解説しつつ、飲食店側が選ぶ際のポイントを紹介します。
グルメサイトの種類と現状
グルメサイト(飲食店ポータルサイト)とは、飲食店の検索や比較、オンライン予約、クーポン発行などが可能なWEBサイトのことです。国内のグルメサイトの具体例として、食べログやぐるなび、ホットペッパーグルメが3大グルメサイトとして挙げられます。
ユーザーはグルメサイトで飲食店の情報を確認した上で、お店を選ぶという利用者は少なくありません。2020年3月の公正取引委員会の調査によると、「消費者が飲食店を選ぶ際に参考にするもの」の1位がグルメサイトでした。
飲食店は、利用者ニーズを掴むために、グルメサイトの概要を理解しておくことが大切です。ここから、グルメサイトの種類や現状を解説します。
グルメサイトの種類
グルメサイトは、自店の情報を掲載してもらうために企業が料金を支払う「ペイドメディア」のひとつです。料金体系によって、以下の2種類に分類できます。
成果報酬型
月額費用+送客手数料型
成果報酬型とは、初期費用や毎月固定費が一切かからず、予約(来店)実績などの成果に応じて料金が確定するタイプです。具体例として、一休.comレストランが挙げられます。
月額費用+送客手数料型とは、毎月の集客対策にかかる数万円単位の手数料と、グルメサイトを通じて予約や来店した人数に一定額をかけて算出した手数料を合計して料金を計算するタイプです。具体例として、食べログやぐるなびPRO、ホットペッパーグルメが挙げられます。
なお、それらのグルメサイトでも、一部機能を使用しなければ、固定費無料のプランを利用可能です。
参考:一休.comレストラン「新規ご掲載について」
参考:食べログ「食べログ店舗会員のご案内」
参考:ぐるなびPRO「ぐるなび掲載のご案内」
グルメサイトの現状
現代社会において、グルメサイトが飲食店選びに欠かせない存在になった一方、最近では「グルメサイト離れ」という言葉もよく耳にするようになりました。グルメサイト離れとは、ユーザー、飲食店双方において、グルメサイトの利用率が低下している現状を表した言葉です。
ユーザー側のグルメサイト離れの要因として「信頼できる情報が見つからない」、「自分好みのお店が見つからない」などが挙げられます。一方、飲食店側では「掲載料金、送客手数料が高い」、「口コミ、掲載情報が信用できない」などの声が多く上がっています。
飲食店はグルメサイト離れによる影響も踏まえながら、グルメサイトを活用するか否かを判断しましょう。
グルメサイト離れの現状と要因について、さらに詳しい説明は以下の記事を参考にしてください。
「グルメサイト離れ」の現状と原因は?今後の飲食店集客策をご紹介!
【第3回グルメサイト意識調査】加速するグルメサイト離れ。「Google」利用率トップに。「食べログ敗訴は妥当」、飲食店で多数派
グルメサイト活用のメリットとは?
飲食店利用者がグルメサイトを訪問するメリットは、以下の3つです。
情報がまとまっていて、お目当てのジャンルの飲食店を探しやすい
ほかの利用者の意見を参考にできる
クーポンやポイントを使えて便利
一方、飲食店がグルメサイトに登録することで期待できるメリットとして、「潜在顧客層の集客効果」が挙げられます。
グルメサイト活用のメリットについて、詳しくみていきましょう。
潜在顧客層の集客効果
今もグルメサイトの情報を参考に飲食店を決める利用者は多くいるため、掲載によって知名度アップにつながる点がメリットです。媒体によっては、周辺エリアだけではなく、全国、海外にまで自店の存在を伝えられるため、観光客の取り込みにも役立ちます。
ちなみに、グルメサイトのひとつであるホットペッパーグルメだけでも、2021年までに延べ5億人もの人がネット予約で同サイトを利用しています。
また、グルメサイトへの掲載が集客に直結しやすい点もメリットです。グルメサイト自体の認知度、ドメインパワーで、検索すると上位表示されるため、グルメサイトには毎日多くのユーザーが訪問しています。グルメサイトにしっかり露出させることで、比較的短期間で集客効果を期待することができます。一方、自店の公式HPは、立ち上げてから検索上位に表示されたり、認知されるまで時間がかかるため、グルメサイトで新規顧客を獲得し、既存顧客は公式HPからの予約に誘導するという流れが、送客手数料などのコストを最小限に押さえられるので、おすすめです。
グルメサイト活用で注意すべきこと3つ
グルメサイト離れが進むのは、ユーザーだけではありません。飲食店側も、グルメサイトへの掲載をためらう動きが出ています。
飲食店がグルメサイトに登録することで生じるデメリットは、主に以下の3つです。
リピーター増加につなげにくい
高い販促コストがかかる
管理に手間がかかる
各デメリットの内容を詳しく解説していきます。
1. リピーター獲得につなげにくい
グルメサイトは、クーポン発行などの手法で主に新規顧客を獲得するのに役立つメディアであるため、リピーター増加にはつなげにくい点がデメリットです。
グルメサイト掲載後に来店客が急増しても、あくまで興味本位やクーポン狙いが目的の場合は、次の来店につながりません。
グルメサイトを経由して来店した顧客をリピーターにするためには、次回も使えるクーポンを来店時に発行する、独自のポイントカードを発行するなど、飲食店側での工夫が欠かせないのです。
また、グルメサイト経由の顧客データは限られた情報である場合が多く、かつグルメサイト同士の顧客データを連携して一元管理はできないため、顧客管理の強化によるリピート率や来店頻度の向上には向かないでしょう。
2. 高い販促コストがかかる
グルメサイトを利用するには、高い販促コストがかかる点がデメリットです。
テーブルチェックが2022年6月に実施した調査では、「グルメサイトを利用していない」飲食店利用者に理由を尋ねたところ、「月額掲載料が高い(39.0%)」「送客手数料が高い(18.2%)」と、コストに関する回答が上位を占めました。
経済産業省が実施した調査によると、新型コロナウイルス流行前の2019年度でも、飲食サービス業界の平均利益率は約3.67%であり、決して高い数字ではありません。
経費削減のためにも、自店の目的に沿った集客が期待できないのであれば、グルメサイトを利用せず、別の集客手段を検討する必要があります。
なお、無料でグルメサイトを利用できる場合もありますが、有料プランに比べて機能が制限されており、集客効果も低いことが一般的です。
参考:TableCheck「プレスリリース【第2回グルメサイト意識調査】グルメサイト評価、「信頼しない」飲食店6割。飲食店探しは「Googleマップ」「ウェブ検索」が急増」
3. 管理に手間がかかる
グルメサイトに自店を掲載しただけですぐに来店客が増加するわけではないため、掲載後も一定の手間がかかる点がデメリットです。グルメサイトで一定の集客効果を上げるためには、さまざまな工夫を凝らして継続的に運営しなければなりません。
運営する上で、特に心がけたいのが料理を美味しく見えるように写真撮影することです。なかなか自分で上手に撮影できなければ、飲食店向け撮影サービスなどを利用し、プロに撮影してもらうとよいでしょう。
また、各グルメサイトでコンサル機能やサポート業務をおこなっている場合もあります。グルメサイトに掲載したにもかかわらず、なかなか効果が出ない場合は担当者に相談してみましょう。
グルメサイトを選ぶ際のポイント5つ
日本には食べログやぐるなび、ホットペッパーグルメ、一休.comなどさまざまなグルメサイトが存在します。数ある中からグルメサイトを選ぶ際のポイントは、以下の5つです。
コストを比較する
会員数やアプリDL数をチェックする
検索順位が高いものを選ぶ
機能を確認する
自店のターゲットにあわせて選ぶ
ここから各ポイントの内容を紹介していきます。
なお、各グルメサイトの特徴については、以下の記事も参考にしてください。
1. コストを比較する
各グルメサイトによって、料金体系が異なります。それぞれコストがいくらくらいかかるのかをあらかじめ確認した上で、各サイトを比較して選びましょう。
コスト比較時に大切なのは、サイト内で複数のプランを提示しているケースがあるため、内容を確認しながらどのプランにするか、おおよその見当をつけておくことです。
上位プランだと金額が上がる分、グルメサイト内で優先的に表示してもらえるなど特典がつけられていることがあります。
また、各サイトで同じ条件かどうかを確認しなければなりません。例えば、送客手数料を「予約人数」で計算するとしているサイトと、「来店人数」で計算するとしているサイトでは、計算方法が異なることもあるでしょう。
グルメサイトによって、公式HP内に料金が記載されていないケースがあります。その場合は、別途問い合わせが必要です。
2. 会員数やアプリDL数をチェックする
グルメサイトを利用して自店の認知度をアップさせるためには、より多くの人に知ってもらえる媒体を選ぶことがポイントです。各グルメサイトの影響力を知るために、会員数やアプリDL数などをチェックするとよいでしょう。
ただし、各グルメサイトによって算出基準が異なることや、自社にとってアピールしやすい情報だけを載せていることもあるため、比較は簡単ではありません。
会員数やアプリDL数ではありませんが、東京商工リサーチが2021年6月に「即予約」機能が利用可能な店舗数をカウントし、グルメサイトを比較しています。結果は、1位がホットペッパーグルメ(48,370店)、2位に食べログ(33,751店)、3位がぐるなび(27,262店)でした。
もちろん競合も増えるため、必ずしも利用可能な店舗掲載数が多いことが飲食店にとってプラスになるとはいえません。ただし、選択肢が増えることで、飲食店利用者の関心もひきやすいといえるでしょう。
3. 検索順位が高いものを選ぶ
アプリをダウンロードしていないユーザーは、GoogleやYahoo!などの検索エンジン(WEBページや動画などを検索するためのもの)を通じて飲食店を調べるでしょう。
そのため、検索した際に表示順位が高いグルメサイトをチェックすれば、利用されやすいサイトを把握できます。例えば、渋谷にある焼肉業態の飲食店なら、「焼肉 渋谷」などのキーワードで検索をかけ、より上位に表示されるグルメサイトを選ぶ、といった具合です。
4. 機能を確認する
各グルメサイトやプランによって、機能が異なります。集客能力にも十分関連してくるため、あらかじめ機能を確認するようにしましょう。
チェックすべき主な機能やサービス内容は、以下のとおりです。
SNSや公式HPと連携可能か
クーポンは発行できるか
自店をアピールするのに十分な情報や紹介文の量を確保できるか
写真は何枚も掲載できるか
コンサルやサポートの体制は十分か
店舗ページは自由に更新できるか
ただし、機能が豊富であればあるほど、料金が高くなる傾向にあります。実際に自店で機能を十分に活用する時間や、余力があるかどうかも踏まえて選んでください。
5. 自店のターゲットにあわせて選ぶ
飲食店における集客対策には、性別や年代、職業などのターゲット決めが欠かせません。そして、来店して欲しい層に対してダイレクトにアピールするために、グルメサイトはターゲットにあったものを選ぶことが重要です。
例えば、掲載前に厳選な審査を通過しなければならない「一休.com」はハイクラス層向け、関連サイトとして美容室サロンに特化した「ホットペッパービューティー」がある「ホットペッパーグルメ」は、女性向けにアピールしやすい媒体と考えることもできるでしょう。営業担当者に問い合わせてみるなど、各グルメサイトのメインユーザー層を把握したうえで、検討することをおすすめします。
グルメサイト登録時の注意点3つ
メリットとデメリットを比較した上でグルメサイトの登録を決めたとしても、登録時にはいくつか気をつけなければならない点があります。主な注意点は、以下の3つです。
複数利用する際は管理面に注意する
客層が変化する可能性を理解しておく
グルメサイトに頼りすぎないようにする
飲食店がグルメサイトに登録する際の各注意点を確認していきましょう。
1. 複数利用する際は管理面に注意する
より多くの人にアピールするために、複数のグルメサイトを利用する飲食店も少なくありません。複数利用する際には、営業日や時間、メニューといった情報の更新漏れがないように、管理には細心の注意を払いましょう。
また、グルメサイトを通じて予約受付をする場合、複数利用すると空席管理が複雑になってしまいます。手違いで予約客の座席を確保できないなどのトラブルが発生しないように、グルメサイト同士の席在庫連携が可能な予約管理システムを導入しておくことがポイントです。
2. 客層が変化する可能性を理解しておく
グルメサイトを利用すると、クーポン狙いで一時的に来店客が急増することがあります。しかし、来店客数が落ち着いた頃には、以前より客単価の低い層が占める割合が増えている可能性も見過ごしてはなりません。
新規顧客の獲得に配慮しつつも、今までリピーターとして通い続けてくれた常連客やハイクラスの顧客が離れてしまうことのないように気を配りましょう。
3. グルメサイトに依存しない
グルメサイトは、新規顧客の獲得や集客に有効なツールです。しかし、もともとネットをあまり利用しない層や、グルメサイト離れが進んでいる状況も理解し、グルメサイトに頼りすぎないことが大切です。
グルメサイト離れが深刻になってから慌てて対策を考える、ということにならないように、今のうちから自社サイト立ち上げやSNS発信などをはじめておくとよいでしょう。
グルメサイトは、新規顧客獲得目的で活用しよう
グルメサイトとは、新規顧客獲得に役立つ媒体で、ペイドメディアの一種です。グルメサイトを利用することで、知名度アップからの集客、予約業務の短縮といったメリットを期待できます。
グルメサイトにはさまざまな種類が存在するため、コスト比較や自店ターゲットにあった店舗に注目して選ぶことがポイントです。また、複数のグルメサイトを同時に利用すれば、より多くの人にアピールできますが、予約の重複や漏れがないように気をつけましょう。